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【第6回】番組は夢の軌跡を写す。 倉内 均
 
アマゾンの番組の受賞のお知らせから始めます。
先ずは、「NHK会長賞」です。
昨年夏にNHKが中心になって開催された「大恐竜博」がありました。
アマゾンは展示映像とNHKの地上波、衛星波にわたる5本のスペシャル番組の製作を担当しましたが、このプロジェクト全体に対してNHK会長賞が贈られました。綿密な調査に基づいた取材、撮影、恐竜への新しいアプローチの発見、意表を突いたCG映像、とアマゾンにとっても二年に及ぶ大きなプロジェクトでした。
もうひとつは、この春に放送した「キヤノンスペシャル『未来都市江戸〜時空の花園』」が、ATP賞ドキュメンタリー部門の優秀賞を受賞しました。
江戸という時代を「花」で見る、という視点はこれまでありません。
近年の江戸ブームで多くの研究がなされているとは言え、体系的に研究し著された書物は一冊もありませんでした。スタッフは文字通り自らの足で歩いてひとつひとつ棒に当たっていったのでした。
しかも、急遽の決定で、製作から放送まで二ヶ月弱で二時間番組を作るという状況のなか、スタッフはリサーチしながら撮影し、撮影しながらリサーチを進める手探り状態の格闘をしながらなんとか撮り終え、完成したのは放送数時間前でした。

長期にわたる番組も短期に作り上げる番組もそれぞれに苦労はあります。
しかし、今回の受賞は「苦労」に対してではありません。スタッフの「番組への信仰」のようなものが評価されたのだと思います。番組は常に私たちの夢です。如何なる番組も、最初は「面白い番組にしたい」という夢から始まります。その夢を信じ続けること、結局のところ、番組で伝わるのはそのことです。
番組は制作者自身の夢の軌跡を写すもの、と言っていいと思います。

夢を信じる心には、「失敗」という言葉はありません。
テリー・ギリアム監督の映画『ドン・キホーテ』のメイキング・ドキュメンタリー『Lost in La Mancha』を見てそう思いました。
長年のトライを重ねた末、ようやく製作実現にこぎ着けた『ドン・キホーテ』がクランクイン6日目にして頓挫してしまう顛末を追ったドキュメンタリーです。
撮影初日はロケ地であるスペインの砂漠が空軍の戦闘機の訓練地で、ひっきりなしに飛び交う戦闘機の音で同時録音に悩み、2日目は突然の豪雨に襲われて
機材や美術セットが濁流に流され、3日目に再開するも砂漠の色が雨のためにすっかり変わってしまってシーンがつながらず撮影不能、そして6日目、ドン・キホーテ役の主役ジャン・ロシュフォールの持病再発で長期入院を余儀なくされる事態に至ってついに映画は製作中止。スタッフのモチベーションの喪失、無駄になった莫大な投資の回収をめぐって保険会社とのやりとりなど、中止後も3週間ギリアム監督を中心に追い続けています。
あまりに切実、同業者として胃が痛くなる2時間でした。
それでも時折(絶望的な)笑いさえ起こりながら全身を釘付けにされました。その意味では一級のエンターテインメントです。

このドキュメンタリーは一見、一人の人間の夢の崩壊を描く悲劇のように見えます。しかし、私は困難な状況でも黙々と絵コンテを描きつづけるギリアム監督の姿に興味をそそられました。それは絵コンテという「映像の強さ」です。監督が絵コンテを描くシーンが何度となく繰り返されるたびに、映像でモノを考え、映像で自分を表現する、そこでは仕事をすることと夢を見ることは同義であると思わせるのです。
文字や言葉よりはるかに映像はあらゆる現実から解放される可能性を持つと、私は思っています。しかしいま、私たちは本当に映像を信じているだろうか、文字や言葉の力に頼りすぎていないだろうか、映像の中にこそ存在する夢を発見できているだろうか、ギリアム監督に励まされた思いです。
ドキュメンタリーのラストは「COMING SOON」というテロップで終わっています。ギリアム監督の夢は生き続けているというメッセージに他なりません。

(2003年6月)


「Lost in La Mancha」
監督:キース・フルトン&ルイス・ペペ
出演:テリー・ギリアム、ジョニー・デップほか
配給:シネカノン
5/10(土)から 渋谷シネ・アミューズ(tel.03-3496-2888)
ほか全国順次ロードショー


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