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| 【第18回】アクション女優・チャン・ツィイー |
倉内 均 |
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アマゾンではいま、女優チャン・ツィイーのドキュメンタリーを制作している。
チャン・ツィイーは北京生まれの25歳。19歳のとき張芸謀(チャン・イーモー)監督の「初恋の来た道」でデビュー、以来「グリーン・ディスティニー」、「HERO(英雄)」、最近作「LOVERS」と立て続けにヒット作に主演、いまや中国を代表する映画女優となっている。
デビュー後、彼女が出演してきたのはもっぱら最新の映像技術を駆使した<アクション映画>である。そして中国映画は、いまやアクションをもって世界制覇を果たしつつある。
ツィイーのデビュー作「初恋の来た道」は、中国式分類によれば、非・アクションの「文芸映画」だが、彼女のアクション女優としての資質はすでにデビュー作に現れていたと私には思える。
彼女が演じたのは、貧しい農村の小さな学校に町から赴任してきた青年教師に淡い恋心を抱く少女だった。クルマや電話、テレビさえない、現代文明の及ばない土地で、おそらく満足に教育を受けていない少女がインテリ青年に好意を示そうとしても、彼女には彼と交わすべき共通言語がない。彼女にはただ、必死でけなげな行為しか彼への好意を伝える手だてはない。チャン・ツィイーは文字通りの体当たりをもってその役を果たしたが、ほとんど台詞のないこの少女役で映画女優としてのスタートを切ったことは象徴的で、いま思えば、彼女はデビュー作にして、すでにアクション女優の道を歩み始めていたことになる。
いまから20年ほど前に、私はあるドラマのシナリオハンティングで、中国・東北地方の農村の小学校を訪ねたことがある。ちょうど音楽の授業でひとりずつ前に出て歌を歌うのだが、7〜8歳の子供たちが歌詞にあわせて科(しな)を作り、身振り手振り、愛嬌豊かな姿態で歌う様を見て私はとても驚いた。ごく普通の小さな子供がプロ歌手張りに、歌ひとつ歌うにも全身で表現するのである。経験的に私たちがしてきた歌唱の仕方とはだいぶ違って、身体表現そのものを表現とする中国の伝統を感じないわけにはいかなかった。
ちょうどその頃、すなわち文革の時代が終わった1980年代半ば、地方に下放された経験を持つ張芸謀、陳凱歌、田壮壮などが地方を舞台にした作品で国際的な評価を得て、中国映画は一躍世界の注目を集めるようになった。しかし彼らの作品の多くは「文芸作品」といわれる映画であり、ハリウッドに伍して世界を席巻するまでには至らなかった。彼ら新しい世代の映画作家たちにビジネス上の成功を目的にした世界戦略が求められたとき、彼らはきっと伝統の再評価に向かったに違いない。文革で禁じられ,忘れられつつあった、本来中国が伝統的に備えていた身体表現力の再発見。それが彼らの武器になったことは想像に難くない。そして、張芸謀は幸運にもチャン・ツィイーという、旧来の中国女優とはまったく異なった現代的なキャラクターを発揮すると同時に、伝統に根ざした身体表現力を持つ女優と出会うことで、「中国アクション」の世界戦略を成功に導くきっかけをつかんだのだと思う。
先日のアテネ・オリンピックの閉会式で、次回開催の北京を予告するパフォーマンスに伝統的な中国舞踊を取り入れた演出をしたのも張芸謀だった。豊かな身体表現力で成る中国アクションは今や確実に世界の主流になりつつある。
アマゾンの「チャン・ツィイー・ドキュメンタリー」チームはこの夏、鈴木清順監督の新作「オペレッタ狸御殿」に出演した彼女の、60日に及ぶ撮影風景や東京でのオフを取材をしてきた。
そして9月、取材班は北京に飛ぶ。そこには、彼女の生い立ちのなかで重要な、少女時代に学んだ舞踊学校がある。きっと、中国アクション映画とアクション女優チャン・ツィイーの秘密に迫る取材となるだろう。
(2004年9月) |
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