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アマゾンはこの春、ユニチカの健康食品「白幻鳳凰」のテレビ・コマーシャルを制作した。
出演するのは紺野美沙子さん。
「白幻鳳凰」は幻のキノコといわれるハナビラタケの人工栽培に成功したユニチカが製品化したものである。ハナビラタケはアグリクスの3〜4倍のβグルカンを含有するという驚異的なキノコである。森の深くにひっそりとあって人間の健康にとびきりよいキノコの存在は、なにか幻想的な物語を思わせる不思議さを感じさせる。と同時に、栽培を恒常的に可能にした現代の技術への驚きもある。
今回は数社からなる企画競合だったが、アマゾンの企画は凛とした紺野さんのキャラクターをひきだしつつ、植物の不思議さと栽培技術への畏れと驚きが表現されている。キャッチコピーは「背筋をのばしていただく」。これはすなわち自然界と先端技術との融合に向き合うわたしたちの姿勢でもある。
いま、あらゆる商品は「環境」から逃れることはできない。クライアントの企業にとっても制作会社にとっても、コマーシャルはたんに商品情報を伝えるだけにとどまってはいられない時代になっていると思う。だれもがいま地球上で進行しているさまざまな問題を共有する現実のなかにいる。環境にたいする現実的認識が根底にないと、たとえ15秒の世界であっても企画は成立しないのではないかと思った。
自然と科学文明とを対立的な図式で考える時代はもう過ぎている、とはいえ、両者のあいだにある境界線をあいまいにする傾向にはわたしは違和感を覚える。「環境にやさしい」という言い方は自然と科学技術の調和をイメージさせることばとして流行りだが、わたしは素直にうなずけない。自然と文明との間の緊張関係はそんななまやさしいものではないだろうと思うからだ。
かつて朝永振一郎博士がノーベル物理学賞を受賞して、授与された記念のメダルをはじめて見たときのエピソードを思い出す。朝永博士はそこに「自然」のヴェールを「科学」がひきはがそうとしている図柄が描かれていることに感動している。そして、ノーベル賞受賞とはたえず自然と科学との緊張的な関係を自覚しながら研究していくことをあらためて促す機会であることだとしている。朝永博士のことばには、自然を意識しながら文明を作りだしていくという永遠の課題を背負うことになった重みに満ちている。
「アマゾン」という会社を始めるとき、横尾忠則さんに会社のロゴ・デザインをお願いした。横尾さんのイメージは、アマゾンという未知の大自然にテレビジョンという先端的な手法と技術が分け入っていく、というものだった。
考えてみれば、未知の領域に踏み込んでいくときの、対象との間に生まれる緊張関係そのものをとらえることが番組制作なのだと思う。
(2005年5月) |
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