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9月15日に開かれたことしのATPシンポジウムのテーマは「製作会社の将来をになう人材確保の為に」だった。人材の確保は、制作コストの削減に匹敵する、現実的で、かつ将来にわたる切実な問題として、多くの製作会社の重要課題になっている。
有能な若者が以前ほどこの業界の門を叩いてこない、という危機感は高まっている。実際、ATP・TV-EXAMの参加学生の数が今年初めて減り、採用試験応募者が例年の半分に激減した会社もあるなど、就職志望者の減少傾向はアマゾンも例外ではない。
わたし自身でいえばここ数年来、新人採用のたびに志望者の質の低下に絶望感をもちながらも、同時に彼らの姿はわたしたちの鏡であるという自覚もあった。年々の制作費削減や著作権の問題など製作会社が置かれている厳しい現実を反映して、製作会社に否定的なイメージが与えられているのではないか、という思いである。
今回のシンポジウムは6人のパネリストによって行われ、司会はわたしが担当した。
川上裕人氏(楽天「みんなの就職」事業部長)は、大学生の間でのマスコミ業界の人気度は下がっていると紹介しながらも、採用側の努力、たとえばある一流大手企業は親に対する会社説明会までして有能な人材確保に努めている例をあげて、採用側からの熱心な対応こそが必要だと強調した。
また、最近、日活買収で話題を呼んだ携帯向けコンテンツ企業インデックスの取締役・千田利史氏は、IT企業では入社したうちの半分以上が1年で退社するほど人材の流動化は激しいが、それが業界全体の活性化につながっていると指摘し、必ずしも離職者の多さはマイナスではないとした。また、積極的な企業買収で事業の幅を広げるIT業界からの提案として、製作会社も受注型から投資型への転換を考えたらどうかと語った。
音好宏氏(上智大学文学部新聞学科助教授)は、学生が制作現場の体験を通して「テレビの掟」をしっかり学んで帰ってくるインターンシップが将来の人材確保のキーだとし、
先見の明を持つ学生はたしかに存在していること、そして彼らを獲得するにはこちらからの積極的な情報提供やアピールしかないと力説した。
さらに音先生の提言で、わたしが同感に思ったのは、業界を活性化し若い人を引きつけるためにも、一本立ちしたばかりのディレクターやプロデューサーなどミッドキャリアへの研修や教育が重要だと語った点である。
吉武久氏(総務省情報通信政策局コンテンツ流通促進室)は、「三方得」と名づけた、産業とクリエーターと学生が相互に結びあう国の施策を紹介し、クリエーター育成事業は国策でもあると説明した。
高村裕氏(ATP副理事長・経営組織センター長)は、成功した番組のスタッフにはテレビ業界全体で相応の待遇を与えるべきだとし、番組予算が現在のように放送時間帯つまり「枠」に貼つけられるのではなく作り手の質つまり「人」に貼つけるということになれば、この世界をめざす若者の意識も変わる、と日本の放送局のあり方に言及した。
そして、作家の重松清氏は、メディアリテラシーの観点から、大学生はもちろん中学高校生たちのためのメイキング番組が必要だと語った。完成された番組を放送するだけでなく、その番組のなかでたとえばADの仕事ぶりがひとつひとつの場面を形づくる様を伝える番組を放送することとか、あるいは従来「奥義」とか「秘伝」のように扱われてきた演出法をより開かれたかたちで若者たちに開陳することが大切だとした。いまやビデオカメラ普及で「映像」が特権的な道具ではなくなっている時代だからこそ、テレビの作り手がみずから手のうちを見せることでテレビ文化の未来を拓くことができる、との逆説は説得力に富んだ提言だった。
まだまだ、わたしたちがやれることがあるじゃないか、製作会社が掴み取ることができる未来はあるじゃないか。今回のシンポジウムはわたしに勇気を与えてくれた。
(2005年10月) |
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