アマゾンが製作した映画「佐賀のがばいばあちゃん」がようやく完成、来春、ティ・ジョイの配給、東映の配給協力によって全国公開されることが決定した。準備から2年余、いよいよ映画は世に出て行くことになる。
今回、ティ・ジョイに配給を引き受けていただいたことに、わたしはいまとても興奮している。ティ・ジョイは従来型の映画館のあり方とは異なった、全く新しい発想で作られたきわめて魅力的なシネコン・チェーンだからだ。
この映画がどれだけの数の映画館で上映されることになるか、それは作品のもつ力と話題作り次第だが、拠点となるのは全国各地のティ・ジョイの劇場である。
先日、わたしは福岡県の久留米と小倉のふたつのティ・ジョイを見学してきた。いずれの劇場も新しく開発された商業施設のなかにあって、ショップやレストラン、アミューズメント、書店などと軒を連ねている。この商業施設を訪れた人がエリアを進むうちにいつのまにか自然の流れで映画館の広いロビーにたたずんでいる、という格好だ。
こうした戦略的な設計は劇場のなかにも及んでいる。久留米は10スクリーン、小倉は8スクリーンを擁した劇場だが、受付から各スクリーン入り口までの廊下は長い距離がとられている。つまり、日常から非日常である映画の世界へのアプローチがたっぷりとある。逆にいえば、映画を見終わってもしばらくは映画の世界にひたっていられる時間が長いということだ。小倉に至ってはロビーを出るとちょうど目の前にライトアップされた小倉城がそびえていて、不思議な気分はいや増した。
そして、圧巻はスクリーン(映写幕)。わたしにとっては驚きの映画館体験だった。傾斜のある階段状の客席なので、座席に座ると視野にはスクリーンしかなく、映画と自分が一体となった感覚になる。この、高精度のスペックをもつドイツ製のスクリーンに映る画面は立体的に迫り、さらに、サミュエル・ゴールドウィン・シアター(通称:アカデミーシアター)と同じフルデジタルサウンドシステムを体験してみると、この劇場に一度でも足を運んだ人はそのあともずっと映画が好きになるだろうと思ってしまうほどだ。これこそが究極の戦略なのだとわたしは最後に気づいた。
映画の魅力とは、フィルムに込められた作り手のメッセージを受け取る感動体験にとどまらない。映像と音響の信号を正確にキャッチすることで感動の質を高め、いかに長く感動を持続させるかということでもある。そして、素晴らしい映画体験は、人々の輪を広げ世代をつないでいくだろう。劇場は人をつなぎ時代をつなぐ、そのためのメディアであるとあらためて思った。
わたしは、アマゾンが製作する最初の映画が先端的発想をもつ劇場を拠点にできることを幸福に思う。
(2005年12月)
ティ・ジョイHP:http://www.t-joy.net/