4月22日に九州13館で先行公開された「佐賀のがばいばあちゃん」は、6月3日に全国に拡大して以来、現在まで延べ80館規模で上映されてきている。15週にわたるロングランで観客動員30万人を超える、「単館系」としては大ヒットとなっている。
この映画を見ていただいた方に心よりの御礼を申し上げます。
映画「佐賀のがばいばあちゃん」のヒットには、たくさんの「異例」が詰まっている。
異例の第一は、感謝してもしきれないほどの、心のこもったプロモーションである。原作者の島田洋七さん、主演の吉行和子さん、工藤夕貴さん、浅田美代子さん、山本太郎さん、三宅裕司さん、そして明広役の三人の鈴木祐真さん、池田晃信さん、池田壮磨さんは、多忙ななかを番組出演やインタビュー取材や舞台挨拶に多くの時間を割いていただいた。その都度、一生懸命にこの映画の良さを語るその熱さが観客に届いた。取り上げられたテレビ・ラジオ番組、雑誌の媒体数は500を超える。大作映画をはるかにしのぐ数の露出である。テレビスポットによる宣伝など物量作戦が採れないこの映画の予算にあって、宣伝費に換算すれば数億円に値するといわれるほどの今回の宣伝の成功は、出演者と配給、宣伝スタッフの作品への愛情と情熱によるものだった。
異例の第二は、観客にある。
公開当初、「何十年ぶりに映画館に来た」という、ふだん映画館に足を運ばないシニア層と言われるおじいちゃん、おばあちゃん世代の存在が目立った。このシニアの人たちが映画を見終わって、家庭や仲間の間で話題にしてくれたおかげで息子や孫の世代に広がり、さらにこうした傾向に新聞などのメディアも社会現象化としてこの映画を取り上げ、「がばい現象」が一層加速して、40〜50歳代ビジネスマンや子育て中の母親や若いカップルといった幅広い年齢層に広がっていった。シニアの人たちが若い年齢層の動員に大きな影響力を持ったことは、ここ十数年、若者や子供の観客をターゲットの中心にしてきた映画界に、あらためてシニア層を開拓する動きを生み出している。
異例の第三は、海外からの信号である。
国内公開スタート前後に海外からの招待が相次いだ。3月の香港フィルマートでのプレミア上映ではアジアのバイヤーたちから「異例」の好評をいただき、ただちに台湾での公開が決定。6月の上海国際映画祭では招待作品として上映され、60元という当地の物価からすれば安くない入場料にもかかわらず多くの観客が詰めかけ、熱のこもった反響を得た。そして、この秋に開催される、スペイン・バルセロナ、ドイツ・ベルリンの映画祭からも参加要請が来ている。
こうした、矢継ぎ早に寄せられた海外からの関心は、国内での興行に汗をかく私たちを大いに勇気づけ、さらなる高い目標を設定する自信を与えてくれた。
そして、異例づくめの最後は、最新のニュースである。
現在、「佐賀のがばいばあちゃん」公開中の劇場では、ほぼ8月4日で上映が終了する。しかし終了2週後の、8月19日から、全国数10館規模で「凱旋アンコール公開」されることが決定した。この館数は6月3日に全国公開された劇場の数を上回る。これまで上映されなかった地域の劇場でも公開される予定だ。
基本2〜3週で番組編成される現在の日本の映画興行界にあって、少しずつ拡大しながら15週のロングランに至り、いままた、さらなる公開の場を拡げようとしている。
きわめて異例のことだという。
(2006年8月)