去る10月4日から10日まで、ベルリンで開かれた「第4回ベルリン・アジア太平洋映画祭」で、「佐賀のがばいばあちゃん」がグランプリを受賞した。
オープニング上映作品に選ばれただけでも名誉なことと思って出席し、上映後の熱い反応でじゅうぶん満たされたわたしは、賞のことなどすっかり忘れて帰国し、数日後に受賞の知らせを受けたときは驚きだった。
この映画祭は、アジア太平洋地域の良質な作品を欧州に発信することを目的にしており、今年は17カ国から、長編映画部門16作品、短編映画部門29作品、ドキュメンタリー部門11作品が出品された。日本からは、「佐賀のがばいばあちゃん」を含め3作品があった。
10月4日午後7時、200名を超える観客を集めてオープニングセレモニーが始まった。会場のバビロン劇場は1920年代に建てられたというバウハウス風のモダニズム建築。主催者挨拶につづいて、今回の映画祭にも出品しているカザフスタンの女性歌手が民謡を歌ってオープニングに華を添えた。その歌の、遠い昔に聞いた覚えがあるような、どこか懐かしさを感じる節回しに聞き入りながら、わたしは、ハリウッド作品が大挙して集まるような映画祭とはだいぶ趣きを異にする、主催者の志(こころざし)のようなものを感じた。
オープニング作品の「佐賀のがばいばあちゃん」の上映が終わって、着物姿の吉行和子さんとわたしがスタンディング・オベーションのなかで紹介された。吉行さんはベルリンの映画ファンにはよく知られた存在で、これまで出演作の何本もがベルリン映画祭に出品されており、主演作のカナダ映画「KAMATAKI窯焚き」は今年2月のベルリン国際映画祭の特別賞を受賞している。上映後、観客から「吉行さんのおばあちゃん役は珍しい。どのようにして老け役作りに取り組んだのか?」という質問があったほどだった。
そしてわたしにも質問があった。「この映画の音楽はなぜ、東洋ではなく西洋のものなのか?」「貧乏なばあちゃんが、なぜ格式のある家に住んでいるのか?」さらに、「アジア映画なのに、なぜカンフー映画ではないのか?」という質問もあった。「これはおばあちゃんの立派なアクション映画です」と答えながら、わたしは「がばいばあちゃん」を「品格」という言葉で説明した。後で通訳の方から「品格」というのはドイツ語にはない言葉だと聞いた。果たして、観客はどう理解したのか確かめずじまいだった。
映画祭が終わって、メイン審査員3人のコメントが届いた。いずれドイツ映画界では著名な方々と伺った。
「佐賀のがばいばあちゃん」はとても人間味のある暖かい映画です。舞台は戦後の広島という暗い過去を背負った日本ですが、人の価値観や人を愛するというテーマは万国共通であり、例え生まれ育った環境が違っていたとしても共感を覚える作品です。」
― Film Museum of Berlin /Dr. Rolf Giesen
「佐賀のがばいばあちゃん」は人間の美しさや、やさしさがうまく表されている作品だと思います。このように普遍的なテーマを扱った作品は世界中どこに行っても受け入れられるのではないでしょうか。」
― Potsdam School of Film and Television /Yvonne Michalikさん
これこそ究極の家族映画!テーマの素朴さと身近さで大勢の人々を惹きつけることでしょう。
― 映画評論家 Kean Wongさん
最後に、ベルリン滞在中、わたしたち一行に心のこもったもてなしを尽していただいた映画祭関係者、日本大使館、そして在留の方々に心から感謝申し上げます。
(2006年11月)