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【第39回】 「わたしが子どもだったころ〜唐十郎」
倉内 均
 唐十郎さんと久しぶりに番組でご一緒した。2003年の『四谷怪談〜恐怖という名の報酬』以来である。
 『わたしが子どもだったころ』は、この1月からNHKハイビジョンで始まった新番組で、各界で活躍する人物の子ども時代に焦点をあて、インタビューと再現ドラマとで構成されるものだ。
 唐さんは、劇団唐組を率いて、作家、演出家、俳優として年間2回の定期公演を精力的にこなしている。その成果が、このところの連続的な受賞に現れている。2003年に紀伊国屋演劇賞個人賞、鶴屋南北賞、読売文学賞。2006年には長年の業績に対して、読売演劇大賞芸術栄誉賞を受賞している。これらの評価は、唐十郎の演劇が「現在」を映している、なによりの証左であろう。
 昨年11月に浅草の木馬亭で上演された、新宿梁山泊による唐十郎作『風のほこり』は、唐さんのお母さんが戦前、浅草の劇場に自分が書いた脚本を持ち込んだというエピソードをモチーフにした、昭和5年当時の浅草のレビュー小屋の話である。わたしは70年も前の「過去」を見ながら、そこに生きる人物の描き方とかれらの生きる時代設定に新鮮さを感じ、新しい演劇に触れた思いがした。
 唐十郎が描く世界は、諫早湾干拓のギロチン堤防(『泥人形』)など現代の事象をモチーフにした芝居であっても、中枢に隠れてあるのはいつでも「過去」である。そして、唐十郎の過去にはとてつもない輝きのエネルギーが満ちており、たえず過去の力が現在を照射し、侵し、のみ込んでいく。観客は、いま自分が確かに依っていると考えている根拠や場所など、所詮フィクションに過ぎないと思ってしまうほどの時間を体験する。

 そうした唐十郎の「子どもだったころ」は、彼の「過去」の原点に違いない。舞台は、戦後直後の下谷万年町。八軒長屋が並び、上野公園で商いをする男娼たち、紙芝居屋、浅草のストリップ劇場で踊る少女などが住み着く街頭劇さながらの町である。
「唐十郎」がどのようにして誕生したか。その謎に迫ろうと思う。

『わたしが子どもだったころ〜唐十郎篇』
放送:2月21日(水)22時30分〜23時15分
NHKハイビジョン

(2007年2月)


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