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【第51回】いま、わたしたちはチャンスのなかにいる。
倉内 均
 2008年6月にアマゾンがラテルナと提携して半年がたちます。この間、わたしたちに起こっている変化は、困難な状況のなかでのチャンスを考える機会を与えてくれます。
  変化は二つあります。一つは、これまで放送局がほとんど唯一の相手だった製作会社アマゾンのありようの変化。もう一つは、ジャンルを超えて多様なクリエーターとの交流が生まれていることです。
  今回のわたしたちの提携の主旨は2011年以降をにらんでの「デジタル」をキーワードにしたコンテンツ作りでした。いうまでもなく、デジタル・コンテンツは放送に止まらず、デジタルスクリーンを備えた劇場での上映やネット配信、DVDなどへの流通に汎用可能な特質をもっています。しかしながら、独立系製作会社にあっては、ワンコンテンツ・マルチユースに足る資本力や流通力をもち得ませんでした。
  アマゾン×ラテルナの提携は、双方にとってビジネスチャンスを拡大する機会となりました。ラテルナの主たる業務はファンド、すなわち出資をもって映画をはじめとするさまざまなコンテンツを製作することにあり、ティ・ジョイ(全国150スクリーンを運営するシネコン事業)、東映アニメ、東映ビデオ、東映エージェンシー各社からなる製作から販売までを網羅する「産地直送型」を旨とするグループ事業です。
  いまわたしたちは、放送で完結しない、劇場上映やソフト販売も視野に入れた企画作りや制作を進めています。そのなかに、昨年10月に行った衛星配信制作がありました。都内で開かれたあるイベントを衛星中継し、全国のティ・ジョイ系の劇場にライブで配信するというものでした。当日のイベント会場に集まった有料の2000人の観客と同じく有料の全国4000人が各劇場で映像を共有しました。この配信には、放送局が介在しない、テレビ番組製作会社アマゾンにとっては初めての経験でした。今後、こうした劇映画以外のコンサートやスポーツなどの配信と上映作品、ODS(Other Digital Stuff)の開発も積極的に押し進めていくつもりです。これはとりもなおさず、これまで視聴率が第一に問われる企画や制作のあり方を変え、スタッフの意識変革をもって組織のありようをも変えていくことになると考えています。
 
  第2の変化は、提携以来、わたしたちの周囲でさまざまなクリエーターたちとの交流が起こっていることです。映画監督、脚本家、ノンフィクションライター、CGクリエーター、映画会社の宣伝マン、あるいはアーティストをかかえる音楽芸能プロダクションのプロデューサーなど、従来の映画会社や放送局の枠組みに飽き足らない志をもつ人々です。アマゾンの社内会議には、こうした社外の人々も出席して、互いに情報を交換し、アイディアを提案し、新しいコンテンツ作りとビジネスをめざしています。昨今アジアの製作現場で叫ばれる「共同制作」という概念を、異文化同士の衝突と克服によって得られる交流と考えれば、わたしたちの提携の目的に通じます。それは、これまで利害を異にしてきた多様な人たちとともに、仕事を通じて喜びを共有していくということに他なりません。
 
  この半年間にアマゾンが経験した変化は、デジタル化を契機にますます広範な製作会社に起こってくると思います。だとすれば今後、変化に対応し、新しい方向に舵を取ろうとする仲間が増えていくでしょう。わたしは、放送業界が困難な状況にあるいまだからこそ、大きなチャンスの到来と考えています。

(2009年1月)


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