4月新年度、新たに新卒の社員や契約スタッフが参加してくる。期待感が膨らむ季節だ。植物が新芽を出し花を咲かせ葉を出し実を結ぶように、新人もまたつぎつぎと状態を変化させ、生まれ変わっていく様は、こちらに仔細に観察する力が求められはするが、まだまだ映像世界に未開の地があることを信じさせてくれる。会社として安定的な状態でなければ新しい挑戦はできないが、同時に生き物としての組織や集団である以上、たえず流動的なところに身を置く気持ちがなければそれもできないと思う。
いま、アマゾンに起こっている新しい挑戦の例をご紹介しよう。
ひとつは、映画監督の五十嵐匠がアマゾンの所属となったことだ。かれは、3本のドキュメンタリー映画を経て、戦場カメラマンの一ノ瀬泰造を主人公にした劇映画「地雷を踏んだらサヨウナラ」、金子みすゞの生と死を描いた「みすゞ」、陶芸家板谷波山の「HAZAN」、画家田中一村の「アダン」、幕末のサムライたちの青春の「長州ファイブ」など時代と向き合った孤高の人物を描き、メッセージ性の強い映画を創りつづけてきた。映画の他にもさまざまな分野での映像作りをしていきたいという五十嵐の意向を受け、すでにアマゾン制作の「美の壷」(NHK・ETV)を演出し、現在も別のレギュラー番組の制作にとりかかっている。また、去る3月に製作発表された映画「半次郎~桐野利秋 風伝~」の監督としてこの秋のクランクインめざして準備を進めている。西郷隆盛とともに明治政府と戦った桐野利秋の志を描くものとして、稲森和夫、瀬戸内寂聴氏ら多くの政財界、文化人の応援を得て、鹿児島と京都で撮影する映画である。五十嵐のこれらの仕事ぶりは、ジャンルを越えてデジタル映像表現の一元化を積極的に押し進めようとするアマゾンの挑戦の一端を示している。
クリエーターの新たな参加がアマゾンの表現の場を広げることにつながる例だとすれば、深さにつながる例もある。
4月に撮影が始まるラテルナ製作の「春との旅」という映画への参加である。脚本・監督はカンヌやロカルノの映画祭で注目を集める小林政広。主演は仲代達矢さんである。この映画製作にアマゾンのスタッフが参加している。
かつて北海道のニシン漁に人生を賭け、いまは年老いた忠男(仲代達矢)が孫娘の春(徳永えり)とともに、自分の引き取り先を求めて兄弟たちが暮らす東北と北海道を旅するロードムービーだ。人生の最期ともなる旅は和解と拒絶を巡る旅となり、家族の愛情について考え、人生の終わりと始まりについて考えさせる映画である。
わたしは最初「春との旅」というタイトル名から、宮沢賢治の『春と修羅』を連想したが、この映画も生と死を見つめる修羅の旅であり、賢治の作品がそうであったように日本人の宗教観が色濃く反映されている物語だと思う。現在の日本映画において、このような人間を深く掘り下げる作業に関わる機会が得られたことは幸いである。
ともあれ、4月からのアマゾンに乞うご期待。
(2009年4月)