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長野県黒姫にあるアファンの森での撮影が始まった。アマゾンは20年前の『おいしい博物誌』以来、ほとんど毎年のように、C・W・ニコルさんの森作りの拠点であるアファンの森でさまざまな番組を作ってきた。今回は、BS朝日で放送される(株)リコーの一社提供番組『アファンの森の物語(仮題)』である。
アファンでは、日々森の再生作業が行われている。放置され荒れ放題だった森を少しずつ手に入れ、スギなどの針葉樹を間引き、カツラやナラ、ヤマザクラ、クリなどの落葉樹を植える。すると、それまで密生して日当りが悪かったところに太陽の光が射し、花やキノコ、そして山菜が育つようになる。また、森の中に水路を開き、地面の水はけをよくしたことで、絶滅危惧種といわれる植物が育ったり、きれいな水でしか育たないオニヤンマのヤゴが生息するようになった。そして、森のあちこちに設置されていている巣箱には、”森の番人”といわれるフクロウが棲むようになった。健康な森とは樹木、水、植物、動物など自然のすべての生態系に循環がもたらされ多様性を生みだすことだとニコルさんは言う。

アファンの森©アマゾン
今回、わたしたちは年間を通してアファンの森を撮影する。この森に関わる人びとの地道で熱心な作業を追いながら、季節ごとに変化するさまざまな植物や動物を記録し、またゲストを招いてはこの土地でとれる食材をニコルさん自らの料理で食卓に乗せて、おおいに語っていただくつもりだ。
4月下旬のある日、ニコルさんたちが森の池の底に溜まった泥を掬い、畑の土に混ぜる「泥上げ」の作業を撮影した。ニコルさんが江戸時代の農業書から学んだ農法である。ここに植えられるのはキュウリやゴウヤ。どんな味ができ上がるのだろう、つぎに訪ねるときがとても楽しみだ。
アファンでは、例年よりは少し早い雪解けで、ようやく春が巡ってきたのを待ちかねたように一斉に黄色や紫の小さな花が咲き山菜が地中から姿を出している。そして森はまもなく新緑をむかえ、木々の枝の芽は葉となって群がり森の風景は一変する。小鳥たちが飛び交う夏はもうすぐだ。
その日、わたしはアファンで一日を過ごしながら、森の時間を想像した。自然が司る時間のほかにどんな時間があるというのか。人間も自然の一部とするなら、太古から未来へつなぐ人間の営みの時間がここにあるような気がした。
森の時間に身をゆだねてみる、そんな番組をお届けしたい。
(2009年5月) |
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